
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの利用拡大が求められています。 木質バイオマスは、発電・熱利用・熱電併給など幅広いエネルギー分野で、さらなる活用拡大が期待されています。
木質バイオマスの健全な利用は、森林によるCO2吸収量の増加や山村地域の経済活性化、エネルギーレジリエンスの強化など幅広いメリットをもたらします。
一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・ 産業技術総合開発機構)委託事業に基づき、木質バイオマス燃料の品質向上と、公正なエネルギー取引の定着による市場取引の活性化を目指して、木質バイオマス燃料(チップ・ペレット)の品質規格を策定しました。ぜひご活用ください。
品質規格
民生用木質チップ燃料
産業用木質チップ燃料
産業用木質ペレット燃料
木質ペレット燃料の安全な取扱い及び保管
ユーザーガイド
木質バイオマス燃料(チップ・ペレット)品質規格 概要
木質バイオマス 品質規格の意義
一般的に品質規格のメリットには、当該製品の品質改善、生産の合理化、取引の公正化、使用の合理化などがあります。
国内では木質バイオマス燃料として、主に木質チップや木質ペレットが使用されていますが、原料の由来等が様々であるため、従来、燃料の品質にもばらつきが生じていました。
ボイラー等の燃焼機器は、その設備仕様と燃料の品質がマッチすることが重要です。
木質バイオマス燃料の生産者や使用者が品質規格を使用することにより、均質的な燃料の生産・消費が可能となり、安定的な燃焼や安全性を確保することができます。
木質バイオマスの用途は小規模の熱利用から大規模の発電利用まで広範ですが、ISO(国際標準化機構)に基づき、民生用(家庭・業務等)、産業用(大規模発電等)の品質規格を作成しました。
なお、品質規格の等級表における品質項目は一定の幅を持つため、相対取引において事業者間で独自の品質仕様を定めることは妨げられません。
木質バイオマスにおける代表的な品質項目
水分
木質燃料の水分(湿量基準含水率)は、発熱量や燃えやすさを表す重要な品質項目です。
低水分の木質燃料を使用することにより、発電効率を向上させることができるほか、灰の発生量抑制や木質燃料の輸送に伴う温室効果ガスの排出量を抑制できます。
粒度(チップ等のサイズ)
粗大すぎる/微細すぎる木質チップは搬送や燃焼のトラブルの原因となるため、木質燃料の粒度(サイズ)が均一であることは、燃焼の安定性に寄与します。
品質規格の使用イメージとメリット
木質バイオマスの品質規格を使用することにより、様々なメリットが得られます。
木質バイオマス発電所
- 低水分による燃焼効率の向上
- 搬送設備や燃焼機器トラブル減少による稼働率向上
- 設備メンテナンスの軽減
- 灰の処分費の抑制

バイオマスボイラーメーカー
- 対象燃料の性状均質化による燃焼機器の低コスト化
- 高コストな集塵機等が不要となり、燃焼機器の低コスト化
- 導入コスト抑制による導入台数の増加、木質バイオマスの普及拡大
- 燃焼機器の長寿命化、メンテナンス容易化
- 燃焼制御の高度化、自動化、高効率化

木質バイオマス燃料生産者
- 品質に見合った適正な燃料価格の受取
- 共通した仕様の木質燃料を生産することによる生産性の向上

小規模な需要家(熱利用など)
- ばらつきの少ない安定した品質の木質燃料を使用可能
- 燃料に関する専門的知識や技術が無くとも、容易に使用可能
- 木質燃料の取り扱いや保管に関する安全性の向上
- 木質燃料が「汎用品」化することにより、幅広い製造者から購入可能

環境規制への適合
- 高品質燃料を使用することによる、大気汚染物質の排出低減
- 燃焼効率向上による、CO2 排出量の抑制
- 木質燃料の輸送に伴う CO2 排出量を抑制

分析機関等
- 共通規格に基づく分析や検査の統一化、これに伴うコスト抑制

認証スキームの概要
品質規格への適合性は、相対取引における当事者間で個別に確認することも可能ですが、第三者が認証することにより、その中立性・透明性を向上させることができます。
例えば欧州(EU)では、民生用ペレットのほぼ全量が認証制度による認証を取得しており、消費者は認証ラベルを信頼して、高品質なペレットを容易に購入することが可能です。
ただし現時点、国内では当パンフレットで紹介した木質バイオマス品質規格に関する認証制度はまだ 検討段階です。